幕恋hours short

□曇りのち晴れ
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「雨…降りそうですねぇ」
私は座敷から縁側に身を乗り出して呟いた。


「……」

「……」


「降られないうちに帰った方がいいかなぁ」

そーっと独り言のように言うと、間髪入れずに返事が返って来た。

「「送って行く!!」」

びっくりして振り返ると、座敷に向かい合った大久保さんと桂さんが恐い顔でこちらを見ている。

「いいですよ、二人ともお忙しいし…」

(う〜、恐いよぅ…龍馬さん早く帰って来てっ)

もう小一時間ほどこんな状態が続いて、精神的にへとへとなのに、龍馬さんはなかなか姿を見せない。


そもそも事の発端は龍馬さんなのに。


今朝、二人で薩摩藩邸を訪れた時、いきなり龍馬さんは居合わせた大久保さんと桂さんにこう言ったのだ。


『すまんが、明日から三日ほど深雪を預かって貰えんかのう』


それだけ言うと、忙しそうにさっさと家老の小松様の所へ行ってしまった。

私がどちらの藩邸に厄介になるか、ということになったのだけど、大久保さんは当然薩摩藩で預かる、と例によって自信たっぷりの態度で言い出し、対する桂さんは高杉さんがこんなことがあった時は絶対に連れてくるようにと言われている、と言って譲らないのだ。

そんなこと全く聞いていなかった私は何がなにやらさっぱりわからないし、この二人はいつもの雰囲気と違って妙に殺気立ってるし…。
後に残された私たちは、しばらくこの膠着状態を続けている。


「・・・これは、小娘に決めさせた方が良い様だな。まあ当然どちらを選ぶかは明白だが」

言い合いの間の沈黙に、大久保さんがしびれを切らしように尊大に言った。

「そうですね。深雪さんなら賢明な判断をしてくれることでしょう」

桂さんも負けず劣らずの自信で答える。


「・・・・え、ええっ!?」



私が決めるって!どっち選んでも角が立つんじゃないの?


ど、どうしよう・・・・。








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