幕恋hours short
□曇りのち晴れ
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大久保利通篇
「ここがお前の部屋だ。まあ小娘ごときには広すぎる部屋だが、生憎薩摩藩邸には狭い部屋などないのでな」
相変わらず上から目線の大久保さんを上目遣いに見る。
「ん?何か言いたい事でもあるのか?」
「・・・深雪です」
「それがどうした」
「ですから〜・・いいかげん小娘ってやめていただけたらって」
恐る恐る言うと、大久保さんはにやりと笑って、答えた。
「気が向いたらな。せいぜい私に名前で呼びたいと思わせるよう精進することだ」
「う〜っ」
むっとして膨れる私の頬を、大久保さんはむにっとつまんで顔を寄せた。
「今夜は薩摩より京に上ってきた藩士をねぎらう宴がある。悪い奴らではないが薩摩隼人というだけあって、酒好きで豪快な者たちばかりだ。小娘はおとなしくしていることだ」
最後はちょっぴり真面目な顔で私の顔を覗きこむから、なんだか焦ってしまう。
火照る顔でこくこくと頷くと、大久保さんは満足そうに笑って部屋を出て行った。