束の間の倖せ

□第一話 彼たちの倖せの幕開け
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昔々…神様が動物たちに言いました。


「明日、私が開く宴会に招待してあげましょう。決して遅れないように」


それを聞いた悪戯好きの鼠は、近所に住んでいた
猫に宴会は明後日だと嘘をついてしまいます。


当日、鼠は牛の背に乗り、宴会場の前でひらりと着地。
その後から、牛、虎と続き、宴会は朝まで楽しく行われました。


ただ一匹…
残された猫を除いて…―――











『お願い、紫呉…』

その子供は思いつめた表情で男を見上げた。
泣いたのか、目尻が赤く染まっている。

『由希をここから…本家から出してあげて』

すると男は、子供と同じ目線になるようにしゃがんだ。

「今みたいに簡単に会えなくなるよ」
『……どうして、そんな事言うの』
「え?」

氷のようと言っていいほどに冷静な声。
まだ幼いこの子供に、普通そんな声が出せるのだろうか…。


『由希が助かるなら、俺なんか、どうでもいいの』






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