崩牡丹

□楽しい文化祭
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「五年生だと!!?」
『……うん』

予想以上の食いつきに影四郎は思わず仰け反る。

「そうか…五年生が加われば今より…!」
「だーれが会計なんかに入るか!うちに入らせる!」
「ヘタレの用具委員会なんて選ばれるわけないだろうがッ!」
「体育に決まっているだろ!」

どの委員会も人手不足だからだろう。
幻露が忍術学園に編入するかはまだ決まっていないのだが、皆必死だ。
五年生は大きな戦力になる。

「しかし…」

文次郎と留三郎の言い争いを呆れた目で眺めながら、仙蔵がため息混じりに呟く。

「その五年がどの組になるかでまた変わってくるな」
『…同じ組から二人同じ委員会に入る事はできないから』
「そいつがい組になったら学級と火薬は無理、ろ組になったらやはり学級と、生物は無理」
「図書も…な」

長次が委員長をしている図書委員会には五年ろ組の不破雷蔵がいる。
…様子を見るに、新しい五年生が欲しいとは思っていないようだが。

「は組になればどの委員会でもいいって訳だから……」
「会計!」
「用具!」
「体育!」
『…』

幻露がどんな性格か分かっていないが、体育には入りそうにない気がする。
もちろん本人が選べるわけではないのだが。

『とりあえず、だ、文化祭で気に入った委員会に入ると彼は言っていた』
「「「分かった!!!!」」」
『あっ!』

会計、用具、体育の委員長は一斉に立ち上がり、部屋を出て行ってしまった。
もう夕方だ、今から準備をするより明日の朝から始めた方がいいと思うが…

「放っておけ」
「委員は大変だね、巻き込まれて…」
「…」

仙蔵と伊作と長次はまったりとお茶を飲んでいる。
なんとも正反対だ。

「やっぱり、五年生がいると楽だよね」
「保健はそうかもしれないな」
「…五年がいれば、来年も委員長がいる事になるし」

その方が数馬も楽だろう、と、伊作は薄く笑う。

そういえばそうだ。
次の保健委員長代理は、四年生になった数馬になるだろう。
四年生で代理を務めるなど難しいに決まっている。

『……卒業…か』
「何だ、今更」
『あ…いや、六年生になったあの日が昨日みたいに思えて…』
「そうだね…」

まだ秋だが、月日が経つのは早い。

もう取り戻せない時間。
それに気付くのはまだほんの少し先。

時間が経つのは早い。
――怖いほどに。




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