崩牡丹

□楽しい文化祭
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「あなたが学級委員長委員会委員長の綾部影四郎さんですね」
『……君は?』

見覚えのない少年が一人、影四郎の部屋で正座していた。
凛とした瞳が印象的な少年だ。

彼は前髪で左目を覆っていた。
しかもその下に黒い眼帯をつけている。

「風魔流忍術学校五年、相模の幻露と申します」
『……げんろ、さん?』

風魔流忍術学校…
確か、一年の喜三太が前にいた学校だったはずだ。
前に一緒に町に出かけた時に話してくれたのだ。

この少年は喜三太の先輩…なのだろうか。

「勝手にお邪魔してすみません。学園長先生がここで待てと…」
『それについてはお気になさらず』

勝手に部屋に入ってこられただけで気を悪くするような影四郎ではない。
部屋に戻ったらさっそく勉強でもしようかと思っていたが、やめにした。

『私に用ですか?』
「はい。…あの、それよりも敬語など使わないでください。私は年下なのですから」
『あ…あぁ、分かった』
「ありがとうございます」

深々と頭を下げる幻露。

「私の先輩…錫高野与四郎先輩から学園長に伝言があったのです」
『伝言?』
「はい…


 てーげーすすでーヤローが学園長をねめてっから
 おめしかでーじにさっしゃい、と。
 せーってこー幻露、おめーも
 まごらまごらしてっとひねられるだーよ。


 …との事で…あれ?」

一気に言ってしまってから、幻露は頭を押さえている影四郎に気付いた。

「どうなさいました?」
『…すまないが何を言ってるのか全然入ってこない…』
「簡単に言えば学園長の命を狙っている奴がいるという事です」
『なるほど』

これまでにも学園長の命を狙っている人間はたくさんいた。
もちろん今でも学園長が生きているという事は、全て失敗に終わったという事なのだが…

『呑気にしてはいられないな…』

今回も失敗するだろう、と軽く考えるのは浅はかだ。

「ところで………」
『ん?』
「これはなんですか?」

幻露は部屋のあちこちに散らばる小平太パペットをひょいと摘みあげる。
全て失敗作であり、売り物にならないと判断されたものだ。

『数日後に文化祭をやるんだ』
「ぶんかさい、ですか」

十分呑気ですね、と小さな声が聞こえたが聞こえなかったふりをする。

『各委員会で出し物をするんだが…これは体育委員会に押し付けられてね』
「綾部さんは?」
『あぁ、私は三つの委員会を掛け持ちしているから』

火薬委員会は田楽豆腐と甘酒屋。
学級委員会は受付とお面屋。
生物委員会は菜園を利用した巨大迷路。
どれも個性が出ている…と思っている。

「………」

幻露は少し難しい顔をして考え込み、

「――実は喜三太のように、ここに編入しようかと考えているんです」
『おや…そうなのか』
「決めたいから、参加していいですか?」
『え?』
「文化祭」





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