崩牡丹

□だぶるすさばいばるおりえんてーりんぐ?
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『学園長、全ての組が出発しました』
「おお、ごくろう」

仕事は生徒に任せて自分は呑気に茶を飲んでいる。

「学園長、」

山田先生が天井裏から顔をのぞかせる。

「竹を伐り出しているのはどうやらタソガレドキ城の忍者隊のようです」
「なに、タソガレドキが?」
「竹ばかりではありません。木材も調達しています」

そう言ったのは床下から現れた野村先生。

『竹、木材…』
「あと板とムシロや縄も調達している」
『それって』
「戦の準備…という事じゃ」
「それを予想し、学園長はオリエンテーリングを思いつかれたのだ」

しかしそれならそうと言ってくれればいいのに。
そう思いつつ、影四郎は聞いてみた。

『私に何かできる事はありますか?』
「今はない。生徒たちを監視してほしい」
『分かりました、すぐに出ます』




という事で、


「あ、栗だ!」
「ほんとだー!」
「こら、栗拾いに来たわけじゃないんだぞ」

一番初めに見つけたのが久々知・二郭組、鉢屋・福富組。
栗を集めている一年生を尻目に、木の上から音もなく地面に着地。

「あ、影四郎先輩、お疲れ様です」
「お疲れ様です」
『お前たちも。…それは地図か』
「はい」

どうぞ、と兵助が地図を影四郎に差し出す。
地図には所々赤く印がつけられているから、恐らくそこが指定地点なのだろう。
しばらく地図を眺めていたが、気付いた。

『…こことここ、それからここか…』
「何がですか?」
『指定地点…この辺りは栗がとれる』
「「え」」
「綾部先輩もそう思いましたか」

そう言いながら歩いてきたのはきり丸。
後ろにはゆっくりと歩いてくる長次。

「多分なんとかして栗を集めてこいっていういつもの我儘なんじゃないっすかね」
「…」
「しかし…」
「待て、中在家先輩が何か喋っておられる」

言いかけた三郎を制す兵助だが、影四郎の耳には長次の声はちゃんと届いていた。
いつも一緒にいたから聞きとりやすいのだろう。
というよりどうしてこの距離で聞こえないのか、と首を傾げる。

それほどまでに長次の声が低く小さいという事なのだが。

「まさかとは思うが…あの学園長先生ならありうる」
『うん、あの学園長なら…しかし…』

タソガレドキが戦の準備をしていると知っているためそれだけが目的とは言えない。
しかし栗が食べたいと思っていた所にタソガレドキの情報が入ったからちょうどいいと…

『……ありえるな…』
「どうする?」
『ん?』
「学園長先生から詳しい話をされているのだろう」

ならばどうすればいいか、指示を出してほしいと言っているのだ。
後になれば、どういう事なのか知る事ができると思っているらしく、
影四郎に話すよう言ったりはしない。

『…じゃあ…長次はついでに栗を集めて指定地点を回ってくれるか』
「分かった」

あっさりと頷く。

『三郎と兵助は普通に指定地点を回ってくれればいい』
「…分かりました」

長次とは違い、兵助は少しだけ不満げな表情だ。
それを見て影四郎は苦笑を浮かべると同時にぽんぽんと兵助の頭を撫でる。
もはや習慣となっているかもしれない。

『私のかわりに、伊助に格好いい先輩を見せてあげなさい』
「はい…」
「先輩はどうなさるのですか?」
『とりあえず野村先生に頼まれた事をやっていようと思っている』

と言っても生徒を監視するだけだ。
適当に指定地点を回っていればいいだろう。
何かあったら指定地点を担当している先生が教えてくれるはずだ。




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