崩牡丹

□だぶるすさばいばるおりえんてーりんぐ?
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『だぶるすさばいばるおりえんてーりんぐ?』
「そうじゃ」

ずるる、とお茶を飲みながら学園長は頷く。

『聞き慣れない言葉ですが』
「まあ簡単に言うなら

 ≪まぜこぜ二人一組生き残り野外指定地点発見通過走破時間争い競技≫

 じゃな」
『…』

――どこが簡単ですか
影四郎はきりきり痛む胃を抑えながらため息を零す。
「簡単に言えば≪突然の思い付き≫」の方が明らかに分かりやすいだろう。

『何故そのようなものを?』
「暇だったから」
『胃が痛いです…』




というわけで。



『ダブルスサバイバルオリエンテーリングを開催する』

思い立ったが吉日という言葉もある!
と学園長が喚くため、その日の授業は全て中止。
オリエンテーリングを開催する運びとなった。

「だぶ…何だって?」
『学園長の突然の思い付きだ』

他の学年には学級委員長を通じて既に知らせてある。
後は六年生に知らせるだけだ。

「もう他の学年は動き出しているな…」

窓の外を眺めていた仙蔵がぽつりと呟く。

『まず違う学年の生徒と二人一組になるんだが…』
「…って事は、俺たちの元には下級生の方から寄ってくるのか」
『まあそうだろう』

下級生が生き残るには、上級生と組んだ方がいい。
今頃下級生は上級生探しに必死になっている事だろう。

「で、おりえんてーりんぐとは?」
『ええと…』


校外に指定地点が設けられており、
地図と磁石を頼りにその地点を発見・通過し、
短時間で目的地に着くことを競う野外競技である。


『…だそうだ』
「野外競技か!私の出番だな!!」
『あ』

言うが早いか小平太は教室を飛び出して走っていった。
組む相手を探しに行くのだろうが、仮にも忍者がどたどたと足音をたてて
爆走してもよいのだろうか。

「食料は?」
『二食分は受付で貰える。後は各自で用意しろとの事だ』
「ふむ…とりあえず兵太夫を探しに行くか」

次に教室を出たのは仙蔵。
同じ委員会の一年生と組む事にしたらしい。
すると仙蔵と入れ違いで、きり丸が走ってきた。

「中在家先輩、もう誰かと組んでますか!?」
「いや」
「じゃあ僕と組んでください!!」
「ああ」
「よっしゃ!」

そうして長次はきり丸と組む事になり、教室を出ていく。
残ったのは伊作と留三郎と文次郎だ。

「伊作はどうする?」
「うーん、とりあえず医務室に行けば後輩たちがいると思うから」
「俺も後輩だな…佐吉か団蔵か…」

伊作と文次郎はそろって教室を出ていく。

「…お前はどうするんだ?」
『後輩と組んでやりたいとは思うが』

苦虫を噛み潰したような顔をしている影四郎。
それだけで留三郎は察した。

「面倒事を押し付けられたのか…学園長に」
『いや。しかしそうなるだろうと思っている』
「お気の毒に」
『そう思うなら代わってくれないか』
「断る」

言いながら逃げるように教室を出ていく留三郎。
ぽつーんと一人残された影四郎だが、このまま教室に残っているわけにもいかない。


………
……


『小松田さん、』
「あ、綾部くん。誰と組むの?」
『組みませんし参加もしません』

受付に行くと小松田が一人で座っていた。

『誰が出発しました?』
「鉢屋・福富組と七松・皆本組、中在家・きり丸組だよ」
『そうですか』

小松田の隣に座りながら影四郎は名簿を覗き込む。
確かにまだ三組しか出発していないようだ。

しかしオリエンテーリングは先に出発すればいいというものではない。
有利になるかもしれないが、指定地点をどううまく回るかで、勝敗が大きく左右する。
一番最後に出発した組が優勝する可能性もあるのだ。

「何で組まないの?学級委員長の仕事?」
『学園長に参加しないよう言われていて…多分そうだと思います』
「大変だねぇ〜」
『……そうですね』



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