崩牡丹

□拍手文
2ページ/3ページ



仙蔵夢(?)
連載夢主ではありません。






「仙蔵の髪は本当に綺麗ね」

 何度呟いたか分からない台詞をまた呟きながら、前に座っている彼の髪を撫でる。
 さらさらした手触りが心地いい…

「羨ましい。私も仙蔵の一部になりたい」
「…」

 ほんの少しだけ仙蔵の体が動いた。
 きっと振り向こうとしたのだろうけれど、私が髪を離さないから諦めたみたいで、

「私になりたい、ではないのか」
「ん、あなたになってさらさらの髪に触れるのもいいわね」
「違うのか?」

 違うわ。まったく違う。

「あなたになったらあなたはいなくなる。私はあなたの一部になりたい」  

 髪を離して仙蔵の前に移動して、見た目の印象からでは想像できない、
 鍛えた筋肉が覆う腕にそっと触れる。

「あなたの一部になれれば、あなたが死んだ時に死ねるもの」
「…」
「心臓に…なれたら…」

 とくんとくんと、静かに鼓動する仙蔵の命の塊。
 それ自身に触れるわけじゃないけれど、あいていた方の手で彼の胸に触れてみた。

「……――」
「だめ」

 仙蔵の口が私の名を紡ごうと動くから、私は首を降った。

「名前を呼ばないで」

 あなたの声で、名前を呼ばないで。
 一回呼ばれる毎に想いが育ってしまうから。
 これ以上あなたに対する想いが大きくなったら、
 私は、壊れてしまうから。

「愛してるわ…」



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ