崩牡丹

□生きていたい
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「………」

影四郎の仕事を片付けていた文次郎が兵助の様子を見に医務室にやってくると、
憎らしいほどに安らかな表情をして眠りこけている影四郎がいた。

「……〜〜っ…はぁ…」

昔を思い出し、神経を張り詰めていた自分がバカに思える。
影四郎ならさらっと『文次郎は本当に単純だなぁ』くらいの事は言うだろう。

しかし兵助の隣で眠っている影四郎を見たらどうでもよくなった。

「無理はするなよ」

聞こえていないと分かってはいたが、ぽつりと、呟いた文次郎だった。





…そして、数刻後、

「う……」

兵助が目を醒ます。
怪我をした部分はまだ痛むが、それほど酷くはなさそうだ。

――先輩に謝らないとな…

そう思ってふと隣を見ると、

『…ぅー…ん…』
「…………」

影四郎が顔を兵助の方に向けて寝ていた。
近さにまず驚いたが、影四郎の右目が見えている事に気付き、近さなど気にならなくなった。

――傷…

傷がある事は知っていた。
けれど、その理由など、考えた事すらない。
長次と同じように、武器を扱う練習をしていてついたものかとうっすら思っていただけだ。

「先輩…」

上半身だけ起き上がり、そっと影四郎の頬に触れようとして…躊躇った。

自分などが触れていいのか、と。

けれど本人は眠っているのだし、周りに誰もいない…
悪戯でもしているかのような罪悪感がざわざわと胸に広がるが、兵助は手を伸ばす。






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