崩牡丹

□傷
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六年生と五年生の合同実習。
合戦に行って、課せられた任務を班で遂行する…
危険と言えば危険な実習だった。

が、そこは上級生。
ほとんどの生徒が怪我もなく、無事に任務を終わらせていた。

ほとんどの、生徒は。

『兵助…兵助!』
「落ち着け、死んでない」
『うるさい!!』

久々知兵助が、先輩である綾部影四郎を庇って大怪我を負った。
横腹に銃撃を食らったのだ。
兵助は既に忍術学園へ運ばれている。

『どうしよう、私のせいで…兵助…っ』
「……」

同じ班だった文次郎は事の顛末を見ていた。
影四郎のせいではないと分かっているし、とっさに兵助が彼を庇ったのも褒めてやりたいところだ。
しかし影四郎の取り乱し方を見るに、変な事は言えない。

「影四郎、お前のせいじゃない。お前でも察知できなかったんだ…相手が悪かった」
『私が気付いていれば兵助が怪我する事はなかった!』
「悔いてても仕方ないだろうが」
『……っ』

影四郎もそれは十分に分かっているのだろう。
何も言わず、悔しそうに顔を歪ませて
その場を走り去っていった。

「…バカタレ」

残された文次郎も、同じような表情を浮かべている。
五年前のあの日を思い出した。




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