崩牡丹

□髪結い忍たまと恋煩い
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「斉藤タカ丸です、よろしくね」

春半ば、桜が散り始めた頃、火薬委員会に新しい生徒が増えた。
年齢は影四郎と同じ15歳なのだが、前は髪結いをしていたため忍の知識が皆無で、
二学年下の四年生に編入したらしい。

『綾部影四郎だ。火薬委員会の委員長をし…』
「綾部くんの髪綺麗だねー」
『……』

――調子が狂うな…

『髪はいいとして、早速斉藤くんには仕事を』
「タカ丸って呼んでほしいな」
『…タカ丸、仕事を教える』
「はーい」

微妙に話を聞かないタカ丸にため息をつきながら影四郎は言うが、
(簡単な作業なのだが)彼に任せてもいいのか不安になってきている。

『まずこの火薬の数を数える』
「うん」
『それをあっちの棚に移動して、』
「…うん」
『終わったらここの棚の火薬の補充』
「…」
『?』

あっちへ行ったりこっちへ来たりの作業が覚えられなかったのか…
若干失礼な事を考えた、瞬間、

『う゛っ』
「もう我慢できないっ!」

渾身の力で後ろから抱き締められた。
タカ丸としては影四郎をというよりは影四郎の髪を抱き締めたかったのだろう。

「ふわふわだー」
『首…締まる…っ』
「あぁっ!ごめんね!」
『けほっ、』

――もう少しで魂が抜ける所だった
冗談でなく本気で安堵しつつ、締まっていた首をさする。

『……ん?…』

文句を言ってやろうとしたのだが、蔵の外にはっきりとした気配を感じた。
隠そうともしていない…兵助の気配だ。

『兵助、どうした』
「あっ…すみません、遅れてしまって…」

バツが悪そうな表情で蔵に入って来た兵助を見てタカ丸が首を傾げる。

「彼も火薬委員なの?」

その言葉にお互いの簡単な自己紹介。

「なるほど、髪結いをされてたんですね」
「よかったら久々知くんの髪も…」
『急にまたは勝手に髪に触れる事を厳禁とする!』
「えぇええ!?」

――兵助の魂が抜ける事になってしまっては大変だからな
――…結構…本気で





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