崩牡丹

□兄弟だから
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『うーん…』
「あらお兄さん、女性に贈り物?」
『へっ!?』

喜八郎は近くの茶店で団子を食べていて、
何故か影四郎が喜八郎の使う紅を真剣に選んでいる状態。
…だったのだが、

「これなんてどう?いい色でしょう」
『え、えぇ…そうですね…』

店の売り子に勘違いをされてしまった。
しかし買わないわけではないので変に否定する必要もない。

「どんな方?」
『えーと……あまり笑わない子です』
「それじゃあこれなんてどう?明るく見えるわよ」
『あ、いいですね…似合いそう。下さい』

差し出された桃色の紅を迷うことなく買う事にした影四郎。
商品と引き換えに代金を払おうとして、止まった。

店の外が急に騒がしくなったのだ。

「何かしら…」
『…すみません、少し見て来ます』
「えっ!」

嫌な予感しかしない。
紅を放って影四郎は店を飛び出した。

「てめぇ、ガキのくせに…」
「ガキでーす」

大男数人に囲まれた喜八郎。
全く怯える事なく飄々としているのはいい事なのだろうが、
はたして忍たまが町で騒ぎを起こしてもいいのだろうか。

『喜八郎!何をしているんだ!』
「あー、兄上ー」
「あ゛ぁ!?てめぇこれの兄貴か!?」

喜八郎が何をしたのかは分からないが、男たちはかなり頭に血が上っているらしい。

「あいつら、この辺りを定期的に荒らしまわってる奴らよ」
『そうなんですか』

さきほどの売り子がひょっこりと店から顔を出す。
その顔に明らかに≪さっさとどこかに行って欲しい≫と書いてあった。

「弟がこれだからどうせ兄も口先だけの軽い男じゃねえか?」
『……ちょっと』

影四郎の口角が上がる。
口元だけ見れば微笑んでいるのだが、目は笑っていない。

『今何て言った?』
「え」
「あーあ、兄上の逆鱗に触れちゃいましたね」
「えっ」

自分が何をしでかしたのか分からないまま、男は気を失う事になる。




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