崩牡丹
□兄弟だから
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本日、忍術学園は休講だ。
「あれ、お出かけ?」
『たまにはと思いまして』
いつも休日には鍛練やら勉強やらに励んでいる影四郎なのだが、
今日は弟が町に行きたいと言い出し、付き合う事になったのだ。
「兄弟でお出かけかぁ…」
『外出届です。ほら、喜八郎も』
「はーい」
四年い組、綾部喜八郎。
学園中に穴を掘っており、穴掘り小僧と呼ばれている天才的トラパーだ。
ちなみに彼の作った罠はプロの忍者にも通用するらしい。
「あ、そうだ綾部くん…」
「『はい?』」
「あああ、ええと、喜八郎くんの方」
「何ですか?」
小松田と喜八郎が話している間、影四郎は空を見上げてぼーっとしていた。
真っ青な空に小さな雲が流れていて、雨の心配はないだろう。
「兄上?」
『えっ』
「そろそろ行きますよー」
『うわ、わ…』
マイペースな喜八郎は影四郎の腕をぐいぐいと引っ張って歩き出した。
「あんまり遅くならないようにねー!」
『はーい』
●●●
忍術学園は人里離れた山奥にある。
普通なら一番近い町に行くだけでも大変なのだが、
やはりそこは忍者のたまご。体力的な面では何ら問題はなかった。
『何か用があるのか?』
「ええーと…女装道具、手拭い、筆…ですかねぇ」
『まずは筆だな』
久しぶりに町に出てきたのにも関わらず弟の買い物に付き合うだけの兄。
それを面倒くさがらないのが影四郎のいい所であり悪い所だ。
「兄上は何か用はないのですか?」
『うーん……あ!』
「!」
『伊作に薬草を買ってきてほしいと頼まれたのだ』
「…」
『ん?どうした?』
「いえ…」
――若干喜八郎の機嫌が悪くなったような…
それは分かるのだが何故悪くなったのかは分からない。
影四郎は十分鈍感だ。
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