崩牡丹

□前途多難な生物委員会
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「ぜ、善法寺先輩…」
「あれ?竹谷じゃないk…って影四郎!?」

医務室に運ばれてきたのは気を失った影四郎。
たまたま伊作が当番の時間帯だったようだ。

「一体何があったんだい?」
「ええと…ま、マリーがですね…」
「マリー?」
「それです」
「へ?」

影四郎を寝かせるための布団を敷いていた伊作だったが、
何かが右手の甲に這うような感覚を覚え思わず視線を右手に移動させた。

「!?!?!?!?」
「あっ、マリー!」
「く、くく、くも…っ」

驚いて動けない伊作だったがマリーは構わずに影四郎の頭に乗る。
どうやら本当に影四郎が気に入ってしまったらしい。

「も…もしかして、気を失っている理由って…」

伊作の想像通り。
ぴょんっとマリーが顔に張り付いて、(皆がマリーを回収したあと)
電池が切れた機械のようにばたりと気を失ってしまったのだ。

「………同情するよ、影四郎」


●●●


「…で、マリーは平気になったと」
『いや平気というか…うん…』
「マリーはどこにいるんだ?」

見たかったのかなんなのか小平太は影四郎の身体中をじろじろ眺めているが、
マリーは妊娠しているため今は飼育小屋の中に戻された。
今はというよりこれからずっと脱走させたくはないのだが。

「しかし影四郎も不運だな」
『伊作と一緒にするな』
「学期が始まって一日で気絶したんだぞ?」

――確かに、こんなに早い生徒はいなかったな
――…一年生ですら早くても一週間…

『(い、一年生以下…なのか…?)』
「…もそ」

影四郎の考えている事が分かったのかぽんぽんと頭を撫でてくる長次。
そして、それを真似してやはり撫でてくる小平太。

『なっ、慰めるなぁっ!』
「あはは!前途多難だな!」
『うるさーいっ』

影四郎の部屋からは、しばらく明るい話し声が絶えなかったという。


●●●


「先輩、今度は小町が抜けだしましたぁ…」
『もういい加減にしてくれ…』
「「小町?」」
『カバキコマチグモ』
「本当に前途多難だな…もそ」
「まったくだな!」



続く
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