崩牡丹

□前途多難な生物委員会
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『八左ヱ門ー』
「あっ…すみません先輩!マリーが…」

委員が網やら餌やら(おそらく誘き寄せる作戦)を手にして
おろおろしているところに走って行くと、何故か一番に言われたのが謝罪の言葉。
首を傾げながら影四郎が何故か問うと、

「…先輩、虫が苦手だと仰っていたので…僕たちだけで捕まえようと」
『うん』
「でも捕まえられませんでした…」
『……』

しょぼんとしている孫次郎と一平を見つめ、思った。
――この子たちは優しいんだな
…と。
薄く笑い、影四郎は二人の新入生の頭を撫でてやる。

『ありがとう、二人とも』
「…先輩…」
『私が捕まえるから心配はいらないよ』
「でも!」

――後輩に頑張らせてばかりではいけないな。
――私は学園長先生に(思いつきとは言え)委員長を任されたのだから
――委員長らしく仕事をこなさなくては。

もう責任感でしか立ち向かえていないのだが苦手な虫の前に出る。
途端にマリーはかさかさと近付いてきた。

『ぎゃ』
「ちょっ、先輩動かないで下さい!」
『ひぃいやぁあ…』

近付いてくるだけでは飽き足らず足に乗り、しかもどんどん上へと上ってきている。
影四郎は足が竦んで動けない状態で、委員は中々手が出せない状態だ。

『んッ…早くぅ…あっ、ほらもう…っ』
「なに顔赤くしてるんですか竹谷先輩」
「し、してない!早く先輩を救出するぞ!」

マリーはもう胸元まで上がってきていた。

「もしかして…」
「ん?」

ぽつりと呟かれた孫次郎の言葉に委員は影四郎から目を離す。
もちろんマリーはマイペースで上り続けているのだが。

「マリー、影四郎先輩の事を気に入ったのかも…」
「あ、なるほど」
「そんなぁ…マリーが僕以外に懐くなんて…」
「じゃあ影四郎先輩なら捕まえられるって事ですか?」

影四郎にはありがたくない考察結果だが仕方ない。

「先輩お願いしますっ」
『お願いってぇ…ああもう!!!』




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