あなただけをいつまでも
□FILE-7 我が心に君深く
2ページ/6ページ
「ただいま帰りまし…た?あれ、どうしたんですか会長」
学生会室に帰ると、残はどこか嬉しそうに笑っていた。
「どなたかいらしていたんですか?」
「あぁ、可愛いお客様だったんだが…」
ばっと扇子を広げて残は言う。
「やはり≪恋≫をすると女性は美しくなるものだな」
「?」
「もちろん女性は元々美し…」
『これを職員室で渡された』
持っていた封筒を残に渡す。
中には写真と書類が入っている。
「あ、そうでしたね!」
『ここ一週間、CLAMP学園内で異常現象が起こっているらしい』
「異常現象…?」
残の顔から笑みが消える。
「コロッセオの舞台が壊れていたり…」
『サラダボールドームのマウンドが裂けてたり…ああ、これだな』
マウンドはまるで巨大な鎌で切ったようにぱっくりと裂けていた。
「悪戯にしては質が悪いな…」
真剣な声色にしてはどこか楽しそうな残。
『言っておくが、もうCLAMP学園調査部に依頼なさったそうだ』
「え」
『…何だその残念そうな顔は』
「いや…」
途端にしょんぼりと肩を落とす残を見て、呆れ顔で柊は溜息をつく。
しかし、それでこそ残なのではないかと思ってしまった自分がいる事に、
軽く笑ってしまった。
「あ、ミサイルだ」
『ミサイル…?――本当だ』
「何ですかあれ?」
窓に駆け寄った玲。
確かに遠く離れた所にとろとろと遅いスピードで
細い何かが飛んでいる。
「あれは電子工学科が理事長の依頼で作った、小型ミサイルだ」
「ミサイルってあんなに遅く飛ぶんですか?」
今にも墜落しそうな程ふらふら飛んでいるが、
残曰くあれは特別製で、気球並みのゆっくり飛行から
音速近い飛行まで自由にコントロールできる物らしい。
さすがCLAMP学園と言える。
「あのミサイルにはカメラが取り付けてあるからな。
きっと理事長は、学園内の視察にでもお使いになるのだろう」
『へぇー…』
「どうしてミサイルなんですか?気球とかでも…」
不思議そうに玲は言うも、やはりここはCLAMP学園。
「楽しそうだから」
という答えが帰ってくるのは当然だろう。
「さ、さすが理事長ですね…」
『……さすがというのか…?』
三人が話し込んでいる間、
蘇芳はずっと、会長机の上に置いてある藤を見つめていた。
.