あなただけをいつまでも

□特別FILE-2 親愛なるきみへ
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毎度定番の、カフェテラスにて。

「幽霊が、出た?」
『ああ…認めたくはないが…』

思い出しただけで顔が蒼くなってしまう。
夜彦はしばし自分のカップを見つめていたが、意を決したように顔を上げた。

「ねえ、それってどんな幽霊だったの?」
『……どんな…か。髪は長くてウェーブがかかっていて…洋服で…落ち着いた色のワンピースを着ていたな』
「あの…この写真、見てくれる?」
『ん?』

夜彦が胸元から取り出した一枚の写真。
彼と、幼い少女が二人…双子だ。そして男性が一人、その隣は…

『あ…れ、この方は……』
「僕の母さん」
『……この人だな、私が見た幽霊は…』

写真から目を離した柊は、見事に顔面蒼白だった。





特別FILE-2 親愛なるきみへ





「…というわけで…患者さんの体によくないかもしれないから、正体を突き止めてほしかったんです」
「なるほど…」

学生会室で、夜彦が残に詳しく説明をしている。
偶然とはいえ二つの事件が繋がったのだから、一応残にも知らせておく必要があると思ったのだ。

「大丈夫ですか…?」
『平気だ平気、全然平気』
「そうは見えないですよぉ」

夜彦に支えられるようにして帰ってきた柊はずっと机に突っ伏している。

「お水持ってきますね」
『ありがとう…』

「君はその幽霊を目撃していないんだね」
「うん。病院もたまにしか行かないし、そもそも夜は普段は入れないし」
「ふむ……」

真剣な表情で残は考え込む。
幽霊が女性だからだろうと柊はぼんやりと思っていた。

「蘇芳、とりあえず目撃証言を集めてくれ」
「しかし…」
「少なくてもいい」
「…ですが…」
「どうした」

キッと蘇芳を睨む残だったが、蘇芳が見ているものを認識すると、途端に小さくなる。
蘇芳が見ているもの――机に山積みになった書類たち…

「ほとんどが、会長が考案したイベントの書類です」
「たっ…確かに考案はしたが……今じゃなくても…」
「期限を延ばして延ばして今に至っているのですが?」
「………」

束の間の沈黙。
そして、

「薬師寺くん…」
「え、あ、待ちます!妹之山くんだったらあのくらい、数日でできる…よね?」
「いえ会長なら数時間で処理できます」
「蘇芳っ」
「わあ、さすが妹之山くん」

助けを求めたつもりが、真逆の方向に。
結局、≪数時間≫、残は机に向かうはめになってしまった。

『普段からやっておけばこんな事にはならないんだぞ…』
「ああ、本当だ…」





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