あなただけをいつまでも

□特別FILE-1 異世界からの訪問者
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「…柊」
『口より手を動かせ』
「……はい」

休日なのに休んでいない初等部学生会役員たち。
残がのらりくらりと仕事から逃げていなければ、今頃みんな家にいるはずだった。

と言っても柊は仕事が長引いてよかったと思っている。
実家に帰りたくないのだ。
普段はCLAMP学園内にある寮で暮らしている。

「今日中に終わりますかねぇ…」
「終わるだろう。…会長が本気を出せば」
「あのなぁ蘇芳、僕はもう本気で…」
『手を動かせ』
「…はい」

蘇芳と玲はとっくに仕事を終わらせているのだが、
会長が仕事をしているのに自分たちだけ帰る事はできない、らしい。
いい機会だからと書類整理を引き受けていた。

「疲れた…」
『それが終わったら次はこれ』
「うっ」
『で、その次は…』

容赦なく次の仕事を残に押し付けようとした、その時。



――キィィィィィ.......ン



突然、耳鳴りのような変な音が聞こえた。
…と思いきや、

『……え』

天井が垂れ下がった。
そう言い表すしかない、信じられない光景である。

その垂れ下がった天井が、はじけた。
さらにその中から人が落ちてきたのだ。



――ドッスンッ



『……』

もちろん柊はそれを見つめることしかできなかった。
まぁ、痛そう…だとかは思ったが。

「次の世界にぃー、到着ーっ!」
「てめぇ!もっとマシな所に出せや!」

その中の一人がぬいぐるみに怒鳴った。
目つきが悪いがまだ若い男だ。

『(ぬいぐるみに話しかけてるな…。いや、ぬいぐるみが話すか…?)』

1人の少女に、1人の少年。
そして、若い男が2人。

柊が不思議に思ったのは(空から落ちて来るのも不思議だが)、
皆が何かのレースにでも参加しそうな服だったと言うこと。

「あ」
『あ』

茶髪の少年と目が合う。
何も言えない柊だが、少年は違ったようで。

「柊さん!」
『え』
「あ、ホントだ、柊ちゃんだー」

知り合いにこんなおかしな連中はいない。
混乱する頭で、思い出したように天井を見上げるが…

「無傷だな」
「無傷ですね」
「でもぺろーんって!!!」
「玲落ち着け」

――そうだ、残たちもいたんだ。
柊1人が幻を見たわけではないと分かり、一応ほっとした。

「あ、残くんもいる」
「こっちでも4人一緒なんだねー」
「ねー」

白いひょろっとした男が先のぬいぐるみと仲よさげに話している。
黒い男は不機嫌そうに学生会室を見回しているし、
少年と少女は何故かずっと柊を見つめているし。

「…玲、」

残の一言で、皆の視線が残に集中する。

「とりあえず、お茶を淹れてくれないか?」






特別FILE-1 異世界からの訪問者






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