あなただけをいつまでも

□FILE-4 マイ・フェア・レディ
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2月14日。
聖バレンタインデー。

ここCLAMP学園初等部生徒会室は、
あり得ないほどの数のチョコで埋め尽くされていた。





FILE-4 マイ・フェア・レディ




「わーっ!凄い数のチョコですね!」
「今朝一番に、わざわざお嬢さん方がここまで届けてくださったのだ」

はっはっはと高笑いする残。

「今日は2月14日、聖バレンタインデー。お嬢さん方とお菓子屋さんが、ここぞと頑張る式典日。
 このチョコの数だけお嬢さん方の愛があると思えば、感謝もひとしおだな」
「さすが会長!すごい人気です!」

にこぱっと笑顔を見せる玲。
だがもちろん、玲の机にもチョコがたくさん積まれている。
残がそのことを指摘すると、

「僕なんかがこんなにたくさん頂いてしまっていいんでしょうか」
「お嬢さん方のお心だ。ありがたく受け取らねばな!」

残は楽しそうに微笑んだ。だが…

『………』

そんな残の隣の秘書机で、いつも通り柊は静かに仕事をしていた。
玲の方から見るとチョコの山しか見えないが。

「それ…柊先輩へのチョコですか?」
『…いや……残のじゃないかな』
「え?でも先輩の机に…」
『……』

残念ながら(?)柊宛てのチョコではない。
今日はバレンタインだからどうせまた学生会室がチョコで埋もれるだろうと
少し早めに登校して、仕事を済ませておこうと思ったのだが…

「「「「柊さんっ」」」」
『はいっ!?』

この日は毎年そうしていたため、女生徒に見抜かれていたらしい。
たくさんのチョコの包みを押し付けられた。

「「「「残様に渡してください!!」」」」
『………はい…』

断れなかった。
そして学生会室につくまでにチョコは増えて増えて…

『しかも残の机にはすでに山があったし…仕方ないから私の机に置いているだけだ』
「そ、そうなんですか…」

不満げに言う柊だったが当の残は聞いていない。
学生会室の扉を見て、

「あ、蘇芳」

何かをひいている重そうな音を立てて、蘇芳が入ってきた。

「おはよう、蘇芳」
「おはようございます、鷹村先輩」
『……何を引っ張っているんだ』

聞くまでもないことだが、一応聞いた。

「…………チョコ、です」

蘇芳は苦い顔。
それも当然で、蘇芳はチョコが山のように積まれたリヤカーを引っ張ってきたのだ。

「すっごいですねー…」
「今朝登校したら、行く先々で渡されて…」
『それでリヤカーか』
「見かねた用務員さんが貸してくださったんです」

自分の机まで辿り着き、蘇芳は改めてチョコの山を見た。

『……蘇芳は毎年、このチョコの山をどうしているんだ?』
「家族で頂いてます」
『玲は?』
「お家に持って帰って、お母さんたちと頂いてます」

当然、自分一人では片づけられないのだろう。

『残は?』
「もちろん、すべてきちんとひとりで頂いているとも」
「「えええええ!!??」」
『…………』

そうだろうと思った、といった様子で、柊は残を見る。
女性の愛をムダにするなんて残には決してできないといったところだ。

「この量を食べるんですよね…」
『らしいな』
「…体重が1キロも変動しないあたりがあの人らしいですね」
『…確かにな』




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