あなただけをいつまでも

□FILE-2 探偵
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初等部学生会室…


「ええっ!来年度の担任編成を書いたリストが!?」
「ああ、なくなったらしい…。それも今日、ついさっきな」
「理事長室からの呼びだしはそれですか」

真剣な表情で残は頷く。

「担任編成って、来年度はどの先生がどのクラスを担任なさるかを決めることですよね」
「そう。毎年12月、理事長自らがCLAMP学園の、幼等部・初等部・中等部・高等部までの担任を選出する」
「えっ…学生数1万人弱のこの学園の担任編成ですか… 大変でしょうね」
「ああ。1週間かかったと、理事長がおっしゃっておられた」

残がギシッと音を立てながら肘掛椅子に座ると、
ちょうどその時、学生会室の扉が開き、柊が急いだ様子で入ってきた。

『…悪い。少し遅れた…』
「………」

しばらく柊を見つめていた残だったが、

「…いや、いい。――実は理事長から…」

何もなかったように今までの経緯を話し始める。

『――…なるほど…』

全て聞き終えると、柊は持ったままだった鞄を自分の机の上に置く。
そしてそのまま机の上に腰掛け、足と腕を組んだ。
とてもお嬢様とは思えない。

『教師に発表するのは明日だったな…今から組み直しても間に合わないか』
「そうだな」

右斜め上を見ながら…何か考え事をしているのだろう、残は軽く頷く。

「どこでなくしたのか、少しは覚えがおありなんじゃないんですか?」
「いや、実は盗まれたらしいんだ」
「ええぇえぇぇええ!!」
「「?」」

過剰に反応をするのは玲。
胸を押さえながら、この場から逃げ出したいかのように後ずさる。

「こ、今回は≪怪人20面相≫の仕業じゃないですよねっ!よっ…予告状もありませんし!」
『誰も20面相の仕業とは言ってない。うちの担任編成リストを盗んでなんの得になるんだ?』
「そ………そうですよね…っ」

玲は柊の言葉にほっと胸を撫で下ろした。
…のも束の間。

『……まあ…20面相がうちの生徒だったら得するかもしれないけど』
「!!!!!!!」
『?』

今度は全身を強張らせてあわあわと周りを見回した。
何がしたいのか分からない柊は首を傾げながら挙動不審の後輩を見守る。

「あのあのっ…柊先輩は…20面相の正体とか……その…」
『正体?知らないが…』
「よかった…」
『…』

何が?とは思ったがまた挙動不審に陥ったら面倒だと判断し、黙っておいた。

「柊!!」
『…何だ』

残の方を見ると、何故か焦った様子で机の上の書類を持ち上げたりしている。
何かを探しているようだ。

「初等部・高等部合同演劇大会の書類を知らないか…!?」
『それなら昨日お前の机の上に…』
「ないんだ!!」
『……蘇芳』
「はい」

残の机の上には他にもたくさんの書類が散らばっている。
一枚一枚確認して探し出すのも一苦労だ。

「すみません、ちょっといいですか?」

しかし蘇芳は机の上など気にせず、机の下にあったゴミ箱の中を漁り始めた。
丸めた紙がたくさん入っている。

「「?」」
『あったか?』
「…これですね」

その中の一枚を取り出し、広げてしわを伸ばす。

「企画書です」
「……」


し―――――――――――ん……


「…さっ…さすが蘇芳! 僕の行動パターンはすべてお見通しだな!」

目にもとまらぬスピードで書類をすり、残はポンっと印を押す。

「さあ!犯行現場へ行こう!」
『…』

ため息をついている柊を引っ張って部屋を出て行った。

残はよく、内容を確かめもせずに捨ててしまうのだ。
彼の机近辺で物がなくなった場合、ゴミ箱か机の下か…もしくは歩いているうちにどこかで落としたか。

なくし物を蘇芳がどこからか見つけてくるのも毎回の事だ。



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