崩牡丹

□火薬委員会の煙硝蔵
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数日間、毎日虫と触れ合わされていたらさすがに慣れてしまう。
というかもう頭の中で何かが壊れたのかもしれない。

とりあえず全ての毒ペットは素手で触れる程度には進化した。

「毒虫を素手で触るなんて…」
『道具がなくて』

気絶したり刺されたり噛まれたりして医務室の世話になる事が飛躍的に増えたのだが、
もう吹っ切れたのか虫に関しての弱音を吐く事はなくなった。

「はい、これで終わり」
『ありがとう』
「しばらく安静にね。毒は侮れないから」
『うん』

素直に頷くと、影四郎は大きく伸びをして立ち上がる。
生物委員会の仕事は終わったが、今日は火薬委員会の当番も重なったのだ。

『火薬の在庫整理をしないと』
「それくらい下級生に任せたら?」
『今日は下級生は実習でいないんだ』
「…あぁ、そういえばうちも」

火薬と保健にはお互いに一年は組と二年い組の生徒がいる。
保健も今日は人数が少ないのだろう。

『先にやり始めてもらっているから急がないと』
「……くれぐれも、安静にね!」
『はいはい』

在庫整理は、時間はかかるが体力を使う作業ではない。
何故伊作がここまで言うのか分からなかったが、影四郎は頷いて部屋を出た。


●●●


『兵助、遅れてごめん』

煙硝蔵につくと兵助が一人で在庫整理を行っていた。
進み具合から見るに、どうやら意外と早めにつく事ができたようだ。

「生物の方は大丈夫ですか?」
『捕まえたから問題ないよ』
「……」

兵助の目に映るのは包帯が巻かれた右手。
――また無茶をしたんだな、先輩は
影四郎がやたら無茶をする人間だという事は
半年も一緒に生活していれば誰もが分かる事なのだ。
五年間彼の背中を見てきた兵助は、そんな事はとっくに理解していた。

『それじゃやろうか』
「…はい」





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