崩牡丹

□忍術学園全員出動!
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「あれ、利吉さん?」
「どうしてここに?」

選抜隊と合流すると、そこには山田先生の息子でフリーの忍者である利吉の姿が。
彼は任務中で、どうやら我々と利害が一致したらしい。

「私たちタソガレ組が集めた情報は…」

・やはりこの戦はタソガレ軍が絶対有利。
・かばいの制札を貰おうと、オーマガ領の村々から
 続々と金品がタソガレへと送られている。
・タソガレ軍は勝利を確信していて、凄くのんびりとしている。
(色々な物売りが商売にきていて、とても戦の最中とは思えない)
・そしてそれはオーマガ側も同じである。

・両軍の戦いがまだ激しかった頃、喜三太らしき子供が
 城の周りをうろついていて、兵に捕らわれたという情報があった。

『…というか、何故仙蔵がここに?』
「学園長からの使いだ」

仙蔵は短く言った。

「お前たちは何を見たんだ?」
「えーっと…」

乱太郎たちの話を要約すると、

オーマガの夫丸の制服を着た男(恐らく影四郎が見た人と同一人物)が
山の中を一人で歩いていて、途中で出会った忍者から差し出された
タソガレの夫丸の制服に着替えていた。
その忍者はきっとタソガレの忍者だとか。

「顔は包帯が巻かれてて見えませんでした」
「で、お前たちはその忍者に気付かれ、後をつけられていたと」
「その男はどんな顔だった?」
「しんべヱに似てました」
『…三郎』
「はい!」

一年は組のよいこたちが見守る中、三郎は立ち上がると、皆に見えないように背中を向けて…

「それって…こんな顔だった?」

ごそごそを顔をいじっていたかと思うと、確かにしんべヱにそっくりな顔になって振り返った。
しかしやはりしんべヱの方が可愛げがある。

「そんな顔でした!」
「これは大間賀時曲時の顔だぞ」
「「「え!」」」
「包帯だらけの大男なら…」

ずっと黙っていた利吉が口を開く。

「タソガレドキの忍び組頭、雑渡昆奈門でしょう」
「ざっとこんなもん?」
「恐るべき実力者と聞いています」

その忍び組頭と、敵対している城主の密会。

「事件の本質が見えてきたな」

山田先生の言葉に頷いたのは上級生と教師、そして利吉。
は組のよいこたちは庄左ヱ門以外ぼけーっとした顔で座っている。

「始めから全部まとめてよーく考えてごらん」
「うーんと…」
「大前提として、」

は組の頭脳、庄左ヱ門の出番だ。

「手潟さんの様子から考えるとオーマガトキ城主、大間賀時曲時は人望がなく、領地から税金が取れない。
 園田村のように、村々は惣という自治組織を作って領主に対抗するようになってきて…」
「あ!!分かった!」

きり丸が急に大きな声を出して立ち上がった。

「どっちもやる気がないこの戦、実はグルだったんだ!」
「え?どういう事?」
「タソガレドキが攻め込んでくるぞと噂を広めれば、
 自分たちの安全を保証してほしいオーマガ領の村々はかばいの制札ほしさに、
 形振り構わず銭や兵糧をタソガレ軍に差し出す!」
「そうか!」

釣られたのか金吾も閃いたようで、すっくと立ち上がる。

「それがグルだったとしたら…!」
「タソガレ側は、どっさり受け取った金品をオーマガに渡すに違いない!」
「って事は…」
「一月前の合戦で本当の勝敗は決まってたって事?」

は組を見渡して、山田先生は一言。

「大変よくできました」
「ううっ…よく…よくできました…っ!」

普段からは組に悩まされている土井先生は目から涙を流している。
泣くほど、は組が事の有様を理解した事が嬉しいのだろう。

『園田村をはじめ、オーマガ領の村々はとっくにタソガレドキの物になっているのですね』
「タソガレは真っ当な年貢では取れないところまで搾り取るつもりなんでしょう」
「酷い殿様だね」

領民を騙してもうけようとするタソガレドキ城主に、は組はぷりぷりと怒りを露わにしている。

『では…山田先生、これからどうするのですか?』
「うむ。まず、これを手潟さんに伝えなくてはならない」
「動き始めるのは夜になりますね」
「何だか忍者みたい」
「忍者だよ」




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