龍 神 の 詩 −暗鬼編−

羽根の姫 - 龍か鳥か
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「中州の家紋……とか、ふざけんなって言われそうだね」

「『ふざけんな。私は愛国心の塊か』ってか?」

 雷乱(らいらん)が与羽(よう)の口調を真似る。


「そんな感じだね。まぁ、与羽は愛国心の塊だけど……。認めないだけで」


「照れ屋なんだよな、ああ言うとこ。あ、小鳥とかどうだ?」

「かわいすぎない?」

「いや、小娘だぜ? 案外口に出さないだけで、ああ言うもんに憧れてんだよ」

「……確かに与羽、雀(スズメ)とか目白(メジロ)とか好きだけどね」


 辰海(たつみ)はまだ納得していないようだが、雷乱は障子紙にはさみを入れはじめている。

 彼の中では何かがぴたりとはまっているらしい。

 そしてすぐに、「貼れ」と翼を広げた小鳥型の紙を渡される。意外なことにかなり上手だ。

 大柄でがさつな雷乱の手から、こんなに愛らしい小鳥が生まれるとは――。


 辰海は観念してそれを穴の上に貼った。

 穴はふさがったが、雷乱はまだはさみを動かし続けている。

 さっきよりも小さい鳥を辰海はまた指示されたところへ貼った。


  * * *


「私さ、『張り直してけぇ』って言わんかったっけ?」

 案の定と言うべきか、自分の部屋へ帰ってきた与羽は、眉間に小さなしわを寄せた。


「その目的は、障子の穴をなくすことだろ?」

 雷乱が全く動じずに言う。

「障子の穴がふさがるんなら、貼りなおす必要はねぇはずだ」
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