龍 神 の 詩 −暗鬼編−
□羽根の姫 - 龍か鳥か
3ページ/5ページ
「中州の家紋……とか、ふざけんなって言われそうだね」
「『ふざけんな。私は愛国心の塊か』ってか?」
雷乱(らいらん)が与羽(よう)の口調を真似る。
「そんな感じだね。まぁ、与羽は愛国心の塊だけど……。認めないだけで」
「照れ屋なんだよな、ああ言うとこ。あ、小鳥とかどうだ?」
「かわいすぎない?」
「いや、小娘だぜ? 案外口に出さないだけで、ああ言うもんに憧れてんだよ」
「……確かに与羽、雀(スズメ)とか目白(メジロ)とか好きだけどね」
辰海(たつみ)はまだ納得していないようだが、雷乱は障子紙にはさみを入れはじめている。
彼の中では何かがぴたりとはまっているらしい。
そしてすぐに、「貼れ」と翼を広げた小鳥型の紙を渡される。意外なことにかなり上手だ。
大柄でがさつな雷乱の手から、こんなに愛らしい小鳥が生まれるとは――。
辰海は観念してそれを穴の上に貼った。
穴はふさがったが、雷乱はまだはさみを動かし続けている。
さっきよりも小さい鳥を辰海はまた指示されたところへ貼った。
* * *
「私さ、『張り直してけぇ』って言わんかったっけ?」
案の定と言うべきか、自分の部屋へ帰ってきた与羽は、眉間に小さなしわを寄せた。
「その目的は、障子の穴をなくすことだろ?」
雷乱が全く動じずに言う。
「障子の穴がふさがるんなら、貼りなおす必要はねぇはずだ」