龍 神 の 詩 −暗鬼編−

羽根の姫 - 龍か鳥か
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「障子(しょうじ)を張り替えろ、ってなぁ」

 与羽(よう)の部屋の前で雷乱(らいらん)は呟いた。

 庭には昨夜の戦いの名残。与羽の部屋の障子戸には人の手が通るくらいの穴。


「全部張り替えるほどじゃないよね」

 新しい障子紙とのり、水、はけなど、障子の張替えに必要なものを抱えた辰海(たつみ)も言う。

「一枚張り替えたら、その戸だけ色が新しくなっちゃって違和感があるから、全部張り替えないといけなくなるし」

 今の障子は、日々の日光などでかすかに黄色く変色している。

 普通にそれだけを見るなら、気にならない白さを維持してはいるが、新しい障子紙と比べてしまうとやはり色が違う。


「全部張り替えるのは面倒だ」

 雷乱が穴の開いた障子戸だけをはずしながら低い声で言う。

「確かにね」

 辰海も同意した。

「じゃぁ、どうする? 穴の開いた部分だけ紙を貼ろうか」

「そうだな。適当に丸く切って貼りゃあいいんじゃねぇか」

「それだと、芸がないって怒られそうだけどね」

 辰海はどこか不機嫌な顔をした与羽を思い浮かべた。雷乱も同様に遠い目をしている。


 たまには、与羽の度肝(どぎも)を抜くようなことをしてやりたい。

「じゃぁ、龍の形なんかどうだ?」

 与羽と言ったら、まず龍を思い浮かべる者は少なくない。
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