龍 神 の 詩 −暗鬼編−
□龍神の郷 - 終章
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「ここが、幸(さち)の墓だ」
「空(ソラ)の妹?」
「そんなもんだな」
希理(キリ)はやや言葉を濁す。
その答えに、与羽(よう)は石の前にひざをついた。
「この時期は花も少ないもんな……」
何も供えられていないそこを優しく撫でる。
「この間までは、栗飯が供えてあった」
希理の答えに、正月に空が持ってきてくれた軽食も栗ご飯だったと思い出す。
何か、思い入れがあるのかもしれない。
与羽は、懐(ふところ)に手を突っ込んだ。
「希理さんに返そうかと思うたけど、ここがええな」
与羽が置いたのは、舞の折に空からもらったガラス細工の帯飾りだった。
そして、次に自分の頭に手を伸ばし、かんざしの一本を抜く。
銀と七宝焼きで梅が模(も)してある。
「花の代わりに」
それもそこに置く。