龍 神 の 詩 −暗鬼編−

龍神の郷 - 終章
2ページ/6ページ

「ここが、幸(さち)の墓だ」

「空(ソラ)の妹?」

「そんなもんだな」

 希理(キリ)はやや言葉を濁す。


 その答えに、与羽(よう)は石の前にひざをついた。

「この時期は花も少ないもんな……」

 何も供えられていないそこを優しく撫でる。


「この間までは、栗飯が供えてあった」

 希理の答えに、正月に空が持ってきてくれた軽食も栗ご飯だったと思い出す。

 何か、思い入れがあるのかもしれない。


 与羽は、懐(ふところ)に手を突っ込んだ。

「希理さんに返そうかと思うたけど、ここがええな」


 与羽が置いたのは、舞の折に空からもらったガラス細工の帯飾りだった。

 そして、次に自分の頭に手を伸ばし、かんざしの一本を抜く。

 銀と七宝焼きで梅が模(も)してある。

「花の代わりに」

 それもそこに置く。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ