龍 神 の 詩 −暗鬼編−
□龍神の郷 - 七章 風水円舞
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唯一目立つ装飾品が、帯に飾られたガラス細工だった。
水滴のようにキラキラと、辺りの光を虹色に反射している。
彼女に敵意を抱いていた人々までもが固唾(かたず)を呑んで見守る中で、与羽は舞台の中央に進み出た。
胸に抱えるようにして持っていた扇を、両手でゆっくり開く。
静まり返った境内に、シャラリと澄んだ音が響く。
その涼やかな金属音に、みなが聞き惚(ほ)れた。
与羽が静かに扇を持った手を前に差し出す。
それを合図に、後ろに控えていた楽師たちがそれぞれの楽器を奏ではじめた。
与羽が流れるような動作で腕を挙げた。
扇についていた黄水晶の飾りが、さらりとかすかな音を立てる。
そして、流れる調べにあわせて優雅に舞いはじめた。
円を描くように滑らかで、指先まで神経を行き届かせた精密で繊細な舞。
羽根のように軽やかであるにもかかわらず、龍のような猛々(たけだけ)しさを合わせもつ。
風水円舞(ふうすいえんぶ)と呼ばれる舞だ。
風や水が流れていくように美しく、舞手の動きに円を描く動作が多いことからつけられた名。