龍 神 の 詩 −暗鬼編−

龍神の郷 - 七章 風水円舞
2ページ/10ページ

 唯一目立つ装飾品が、帯に飾られたガラス細工だった。

 水滴のようにキラキラと、辺りの光を虹色に反射している。


 彼女に敵意を抱いていた人々までもが固唾(かたず)を呑んで見守る中で、与羽は舞台の中央に進み出た。

 胸に抱えるようにして持っていた扇を、両手でゆっくり開く。

 静まり返った境内に、シャラリと澄んだ音が響く。

 その涼やかな金属音に、みなが聞き惚(ほ)れた。


 与羽が静かに扇を持った手を前に差し出す。

 それを合図に、後ろに控えていた楽師たちがそれぞれの楽器を奏ではじめた。


 与羽が流れるような動作で腕を挙げた。

 扇についていた黄水晶の飾りが、さらりとかすかな音を立てる。

 そして、流れる調べにあわせて優雅に舞いはじめた。


 円を描くように滑らかで、指先まで神経を行き届かせた精密で繊細な舞。

 羽根のように軽やかであるにもかかわらず、龍のような猛々(たけだけ)しさを合わせもつ。


 風水円舞(ふうすいえんぶ)と呼ばれる舞だ。

 風や水が流れていくように美しく、舞手の動きに円を描く動作が多いことからつけられた名。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ