龍 神 の 詩 −暗鬼編−

龍神の郷 - 六章 玻璃の雫
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「……すみません」

 辰海(たつみ)は目を伏せた。

 涙がこぼれそうになったが、大斗(だいと)の前で泣いては余計馬鹿にされるだけだ。

 深く呼吸して、何とか堪える。


「俺に謝ってもね――」

 大斗はため息混じりに言う。


「それにお前、血がついたままの刀を鞘(さや)にしまっただろう?」

 大斗が冷たい一番の理由は、これかもしれない。

 実家が鍛冶屋(かじや)をやっている彼は、刃物の扱いには誰よりも厳しい。

「……すみません」

 辰海はもう一度謝った。

 大斗がやってくれそうになかったので、自ら近くに置いてあった桶に手ぬぐいを浸して冷やし、絞ってから額に押し当て横になる。


「中州に帰ったら、ちゃんと刀の手入れ代払ってよ。

 鞘(さや)も傷だらけだ。刀を鞘で受けるから。

 鞘も新しくするから、その代金も」

「……わかり、ました」


「あと、半月は安静にしてな」

「そうします」

 辰海は素直に応えて、目を閉じた。
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