龍 神 の 詩 −暗鬼編−
□龍神の郷 - 四章 金鐘の音
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「じゃけど、今回のことは神官家の落ち度なんじゃろ?」
与羽(よう)もまだ近くに父娘がいることもあり、小さな声で尋ねた。
「そうです。二十歳というと、女性は結婚していて普通ですからね」
「悪かったな、未婚で」
与羽はむすっとした。
「あなたに限っては、未婚で感謝しますよ」
一方の空(ソラ)はにこやかだ。
「それはどういう意味な?」
「わたしにも、あなたと結婚できる可能性があるということです」
「………。……ようそんなこと真顔で言えるな」
与羽は呆れたようにため息をついた。
「ふふ……、照れないでください」
「これが照れとるように見えるか?」
与羽は空にも分かりやすいように、明らかな怒気をこめて言い、立ち上がった。
「とっとと行こうで」
* * *
高い剣戟(けんげき)の音が響く。
思わず身をすくめた辰海(たつみ)のほほを、返り血がぬらした。
大斗(だいと)が急所を外して、足を中心に攻撃しているのは分かる。
しかし、それでも血が出る。
大きな悲鳴を上げ、その場に倒れる者もいるのだ。
倒れたきり、起き上がらない者も多い。