龍 神 の 詩 −暗鬼編−
□龍神の郷 - 二章 領主と神官
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与羽(よう)たち一行は、順調に馬を進めていた。
今走っているのは、両脇に田畑の広がる農地だ。
稲を刈り終わった金茶の株から、再び緑の葉が伸びはじめているのが見えた。
その間でを抜けながら、小鳥が細かいわらをついばんでいる。落ちた米を探しているのだ。
しかし、警戒心の強い野鳥は近くを馬で通っただけで逃げてしまう。
「ごめんな」
与羽は一斉に飛び立つスズメの群れに謝った。
「与羽はやさしいのぉ」と舞行が目を細める。
彼らが馬を駆っているのは、中州を南北に貫く街道だ。
南――中州と華金(かきん)の国境を起点に、天駆(あまがけ)領主の住む龍頭(りゅうとう)天駆まで続いている。
地面はよく踏み固められ、幅も広い。
街道の西には田畑の先に山地が迫り、東には城下町を流れるのと同じ月見川がある。
上流に来たため、川幅はやや狭くなっているが、流れの激しさは健在だ。
馬を走らせてすでに三日が経とうとしているが、この辺りもまだ中州の地だった。
中州城下町は中州の一番南にあるので、北の天駆に行くためには、中州をほとんどすべて縦断する必要がある。
ちなみに、城下町が中州の南端にあるのは、南の敵国から国を守る砦の役割を担っているからだ。
ここまで来て思ったが、中州は意外と広い。