龍 神 の 詩 −嵐雨編−

七色の羽根 - 八章 黒の旗
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「それよりも問題は――」

 秋夜(あきよ)の顔が少し険しくなる。

「ああ、そうだな」

 信仁(しんじ)も彼女の言いたいことを察してうなずく。

「城主自ら前線に立たなくてはならないほど城下本拠地が追いつめられている状況……」


 月日の丘からは中州城下町を見下ろすことができる。

 数か所から火の手が上がり煙が立ち上っているのが見えた。

「まだ城までは侵入されていないようではあるが……。本拠地に応援に行くべきでしょうか?」

 信仁は後ろを振り返った。

 そこに座っているのは武官九位――紫陽(しよう)の悠馬(ゆうま)。この月日拠点の総責任者だ。


「いや」

 悠馬は平野部での戦闘から全く目を離すことなく答えた。


「本当にヤバくなれば向こうの総指揮―― 一鬼氷輪(かずき ひょうりん)が中州川の水量を増やして城下を分断させるだろう。

 相手の戦力を分散させるために極限までは耐えるだろうが、見極めを誤ることはない。

 幸い、こちらは押されているとはいえ、絶望的ではないからな。

 まだ……、やれる」


 そう言う彼の目には、強い意志と希望の光が宿っていた。
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