龍 神 の 詩 −嵐雨編−
□七色の羽根 - 五章 紅の羽根
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「お前と乱舞(らんぶ)がいれば、たとえ俺に何かあったとしても中州は安泰だな」
「……卯龍(うりゅう)さん?」
「冗談だ」
卯龍はいつもの若々しいさわやかな笑みを浮かべてみせる。
「さぁ、約束だからな。お前を戦に参加させてやる。
ただし、見るだけだぞ。
その代り、お前が知りたいことは全て教えてやろう。
お前の部下にも伝えなきゃならないだろうしな」
「雷乱(らいらん)と比呼(ひこ)?」
「そうだ。
彼らは中州の官吏じゃないからな。町民や農民と同じ志願兵の扱いにある。
いや、比呼の方は薬師(くすし)が率いる医療班に組み込まれるかもしれないな。
だが、雷乱はそういう扱いになるだろう。
彼の力は知っているから、それなりにいい場所には就けるだろうが、情報は武官ほど回ってこない。
志願兵にまで戦のこまごました戦略を教えていたらきりがないからな。下級武官にさえ教えないことはたくさんある。
だが、部外秘じゃない。お前が雷乱や他の人に教えるのは自由だ。
知ることで命が助かることもあるだろうし、雷乱はまだ中州の戦のやり方を知らないだろうから、よく教えてやることだ。
基本的な陣形のこと、水のこと――」
「わかりました」
与羽はうなずいた。