龍 神 の 詩 −嵐雨編−
□七色の羽根 - 三章 翡翠の羽根
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「ほら、雷乱(らいらん)笑えって」
「どうだ?」
与羽(よう)に言われて雷乱はぎこちなく笑みながら、自分の肩に乗る少年に問いかけた。
「高い高い!」
「おい、早く代われよ!」
雷乱を取り巻く子供のはしゃぐ声に、少しだけ眉間のしわを緩める。
しかし――。
「ありがとう! おじさん」
子供のその一言で雷乱の表情がこわばった。
与羽は吹き出す。
雷乱はまだ二十代半ば。確かにいつも少し顔をしかめ、いかめしい表情をしているかもしれないが、「おじさん」と呼ばれるほど年には見えないはずだ。
「あははっ……。雷乱、怒るな。怒るな」
与羽が笑いながら言う。
子供たちは与羽がどうして笑い出したのかわからず、きょとんとしていた。悪気はなかったのだ。
「子供にとっては二十五過ぎたらおっさんなんじゃけ。で、はげるか白髪になったら『おじいちゃん』。
――なぁ、この人は『おにいさん』って呼んじゃってくれる?」
「おにいさん?」
「そう、おにいさん。そう呼んでほしんじゃって」
与羽がまだニヤニヤしながら子供たちにそう言い聞かせる。
「おい」
雷乱が不機嫌に声をかけるが気にしない。
「ありがとう! おにいさん」
子供もまったく疑問を持たずに言い直す。