龍 神 の 詩 −嵐雨編−

七色の羽根 - 三章 翡翠の羽根
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「ほら、雷乱(らいらん)笑えって」

「どうだ?」

 与羽(よう)に言われて雷乱はぎこちなく笑みながら、自分の肩に乗る少年に問いかけた。

「高い高い!」

「おい、早く代われよ!」

 雷乱を取り巻く子供のはしゃぐ声に、少しだけ眉間のしわを緩める。

 しかし――。


「ありがとう! おじさん」

 子供のその一言で雷乱の表情がこわばった。

 与羽は吹き出す。

 雷乱はまだ二十代半ば。確かにいつも少し顔をしかめ、いかめしい表情をしているかもしれないが、「おじさん」と呼ばれるほど年には見えないはずだ。


「あははっ……。雷乱、怒るな。怒るな」

 与羽が笑いながら言う。

 子供たちは与羽がどうして笑い出したのかわからず、きょとんとしていた。悪気はなかったのだ。

「子供にとっては二十五過ぎたらおっさんなんじゃけ。で、はげるか白髪になったら『おじいちゃん』。

 ――なぁ、この人は『おにいさん』って呼んじゃってくれる?」

「おにいさん?」

「そう、おにいさん。そう呼んでほしんじゃって」

 与羽がまだニヤニヤしながら子供たちにそう言い聞かせる。


「おい」

 雷乱が不機嫌に声をかけるが気にしない。

「ありがとう! おにいさん」

 子供もまったく疑問を持たずに言い直す。
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