龍 神 の 詩 −嵐雨編−

七色の羽根 - 一章 羽根無き鳥
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 うたかたの黄昏(たそがれ)色が消え、辺りが宵闇に包まれ始める。


 与羽(よう)は立ち上がりはしたものの、まだ名残りおしげに赤みの残る西の空を見つめていた。

 そんな与羽をせかすように、雷乱(らいらん)はまだ与羽の背に手を当てている。


「気に入らないな」

 大斗(だいと)がぼそりとつぶやいた。

「とっととその手を離しなよ」

 その言葉は雷乱に向いていた。


「あと、お前は『空気を読む』って知ってるかい?」

「あ?」

 雷乱が不機嫌に大斗を見る。

 与羽から手を離し大斗に向き直った。

 彼からはすでに殺気が発され、すぐにでも殴りかかりそうな雰囲気だ。


「与羽を気遣ってるのは分かるけどさ。お前には与羽しか見えてないわけ?」

「ちょ……、九鬼(くき)先輩」

 急に険悪になった雰囲気に、慌てて辰海(たつみ)が仲裁に入るが効果は薄い。


「何が言いてぇんだ?」

 雷乱がどすの利いた声ですごむ。

「全く……」

 それに大斗はいたって落ち着き払った声で返した。


「この状態でわからないのかい?

 お前は与羽を気遣っているつもりで、負担をかけてるんだよ。お前の世話をしている与羽がかわいそうだ」
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