龍 神 の 詩 −嵐雨編−
□嵐雨の銀鈴 - 終章
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荷はおもに秋兵衛(しゅうべえ)が買い付けた商品。
黒羽(こくう)、風見(かざみ)、天駆(あまがけ)と旅をしながら手配した商品をすべてここへ運ばせ、それを船に積んで一気に華金へ帰ろうという算段らしい。
貴族向けの高価な工芸品が多いらしく、少しでも月見川下りの危険性を減らすため、大きめの船に腕のいい船頭を雇っている。
中州城下まで下ってくれ、安全性も比較的高い。
中州一行の条件をこれほど見事に満たしてくれる船はこれをおいて他にない。
好奇心が強いらしい秋兵衛に二日がまんすれば、無事中州城下町へ帰りつけるだろう。
与羽は積み荷の指示に戻った秋兵衛をちらと見て、天駆領主と神官に向き直った。
「昨年に引き続き、お世話になりました」
そう頭を下げた。堅苦しいあいさつは龍頭天駆を出る際にすでにしてあるので、ここでは気楽に言葉を述べる。
「また――、今度は遊びに来い」
希理は与羽の頭をポンと叩いた。彼の笑みは明るく豪快だ。
「はい!」
与羽の顔にも笑みが浮かんだ。
遊びで来られるかどうかはわからないが、天駆にはまた訪れることになるだろう。
楽しいことばかりではないだろうが、それでもまた来たいと思える国だ。
「城主にもよろしくな」
「もちろんです」
「中州城下町に戻ったら、どうされるおつもりですか?」
希理の隣に立っている空も口を開く。
「乱兄(らんにい)を手伝って中州の復興のために力を尽くすつもりじゃよ」
丁寧に問う空に、与羽も柔らかな口調で答えた。
「それでは官吏に――?」
本気で城主を手伝うならば、官位は必須かもしれない。