龍 神 の 詩 −嵐雨編−
□嵐雨の銀鈴 - 十二章 紅葉
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「だからどうしたんですか? 先輩には関係のないことです」
不機嫌さを隠すことなく言って、与羽は自分のまぶたを覆う大きな手をどかそうとした。
「関係ないことはないさ」
しかし大斗の手はびくともしない。
「これでもこの旅の間、乱舞(らんぶ)からお前のことを任されてるんでね。黒羽(こくう)と風見(かざみ)でヤマは抜けたんだ。いい加減強がりはやめなよ」
「強がりなんて――」
「どう見ても強がりだろう? つらいこと、嫌なことがあるのなら、もっと頼れ。
男に言えない悩みなら、実砂菜(みさな)や野火竜月(のび りゅうげつ)がいるだろう?」
「……先輩に何がわかるって言うんですか」
与羽は瞼を覆う大斗の手をどかそうと、手の甲をひっかいた。
「またそれ?」
しかし大斗の力はまったく緩まない。
「そりゃあね、お前の全部がわかるとは言わないさ。
でも、何も知らないとも思ってないよ。
今のお前は全然平気じゃないことを平気だと見せようとして失敗してる。
古狐(ふるぎつね)とも距離を置いてるね? 古狐もあえてお前と距離をとろうとしてる。
その理由までは察しきれないけど……。けんかでもしたの?」
「そんなんじゃないです」