龍 神 の 詩 −嵐雨編−
□嵐雨の銀鈴 - 序章
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内容をかいつまんで口に出していた乱舞の言葉が止まった。
「なるほどな」
その内容を読み、絡柳(らくりゅう)はうなずく。
「まぁ、そろそろ帰すべきだとは思っていたが――」
「確かに、引き留めすぎてるよね」
乱舞も絡柳に同意した。
「ん……」
与羽のもらした声も肯定だったが、わずかにさびしさが感じられた。
卯龍(うりゅう)の指示は、大まかにこうだった。
戦後も中州にとどまり、復興を手伝ってくれた近隣国の兵士たちをそれぞれの国に帰す。
しかも、ただ帰路につかせるだけではない。中州からも人を送れと言う。
主要な要員も書かれていた。文官は、漏日(もれひ)の時砂(ときすな)三位と水月(すいげつ)絡柳五位。
武官は九鬼大斗(くき だいと)二位を筆頭に若手から中堅の武官名が五人ほど記されている。
それ以外については、城主に一任すると書かれていた。
しかし、そのあとに、最終的に決まったものは卯龍に送るよう他の文章よりも若干太い文字で記してあるところを見ると、良く卯龍の意図を考えて選ばなくてはならなさそうだ。
そして、その意図は手紙のどこにも書かれていなかった。
「こういうところが『古狐』だよな」
絡柳がかすかにため息をにじませながら言う。
「どう考えても、試されている……」