龍 神 の 詩 −嵐雨編−

紅花青嵐 - 序章
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 五つの影が、闇の濃いところを選んで駆け抜けていく。

 先頭には、斧を背負った盗賊の頭(かしら)。その後ろにかたまって他の四人が続く。

 足音をしのばせ、辺りの気配を探るのも怠らない。

 起伏のある地面にはほとんど季節がひとめぐりしようとしているにもかかわらず、腐らずに残った落ち葉が敷き詰められている。

 彼らに暗闇を提供する木々も、盛りは過ぎつつあった。


 乾いた落ち葉を踏みつけているにもかかわらず、その足音は至極小さい。

 山の中にも集落はある。夜に出歩く者がいる可能性はかなり低いが、用心に越したことはない。


 そう思った矢先、先頭を走る頭の視界の隅に、何かが入った。

 はっとして足を緩めながら、そちらをうかがう。

 その手は静かに背負った斧へとのびていた。


「火か……」

 頭が小さくつぶやいた。その足はすでに止まっている。

 急停止にいぶかしんだ残る人影も、そろって彼の視線を追った。


「野宿? 迷子?」

 短い槍を持った影がつぶやく。その声は少ししゃがれているものの、女のものだ。

「襲いますかぃ?」

 弓矢を背負っていた男が、素早く弓に矢をつがえながら尋ねる。
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