龍 神 の 詩 −嵐雨編−

龍姫の恋愛成就大作戦 - 終章
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「あ……」

 出てきたのは、干した果物。

 少しくすんだ赤や白、橙や黄の果実が甘いにおいを放っている。


「よくやった」

 絡柳(らくりゅう)がほほえみながら果物を一つ取り、まだ呆然と開かれた与羽(よう)の口に入れてやった。

 思い出したように口をもぐもぐさせ、ゆっくりとそれを咀嚼(そしゃく)する与羽。

 次第に与羽の疲労の目立つ顔に笑みが広がっていく。

 果物を飲みこんだときには、まだ疲労ははっきりと見えるものの、機嫌よさそうににこにこしていた。


「ありがとうございます、絡柳先輩」

「おつかれ、与羽」

 辰海(たつみ)も、薄茶の包み紙を差し出す。

「ありがと、辰海」

 こちらは与羽のお気に入りの焼き菓子だった。はちみつで甘く味付けされた餡(あん)がサクリとした薄い生地に、包まれている。

 一口かじると、中の餡からじわりと黄金色の蜜がしみ出した。

 それを落とさないように、舌でなめとりながら与羽はその焼き菓子をあっというまにたいらげてしまった。

 そして、かすのついた指をなめて、机の書類を片付けようと手を伸ばす。

 しかし、よほど疲れているのか、そうしながらも危うく書類の束に頭を突っ込みそうになっていた。


「与羽は先に帰って休め。あとの片付けは俺たちでやっておく」

 何度もあくびをかみ殺し、コクリコクリと船をこぎそうになっている与羽を見て、絡柳が言う。

「そうだよ。君はもう十分働いてくれたんだから」

 辰海も、与羽の髪をやさしく梳(す)いて低い声で絡柳に同意した。
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