龍 神 の 詩 −嵐雨編−

龍姫の恋愛成就大作戦 - 三章 龍姫、政務を執る
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「歴史書とかはもう読んどったのが結構あったけ。

 ――辰海(たつみ)の方は?」

「終わったよ。やっと絡柳(らくりゅう)先輩に『これで良い』って言ってもらえた」

「じゃぁ、あとは本番を待つだけか」

「そうだね。二日……、がんばろう」

「ああ、そうじゃな」


「お茶ですぅ〜」

 その時、開けたままにしていた戸口から一人の少女が入ってきた。

 野火竜月(のび りゅうげつ)。

 古狐(ふるぎつね)の使用人だが、与羽(よう)がかつて古狐家で暮らしていた時、与羽の遊び相手だった名残で、今ではほとんど彼女専属の侍女になってしまっている。


 普段の与羽は大抵のことを自分でやってしまうので、彼女の出る幕はないが、最近は忙しい与羽のために食事を運んだり、着物を選んだりと色々世話を焼いてくれていた。

 今も慣れた手つきで机の上に茶と茶菓子を並べている。


「ご主人さまぁ、明日は私がとってもきれいに飾ってさしあげますからねっ」

 彼女――竜月は与羽や辰海より一つ若いだけだが、舌足らずなしゃべり方と背が低いこともあり年齢よりも幼い印象を与える。


「え……?」

「まさかご主人さま、いつもの格好で良いと思っていらっしゃるんですか!?

 ダメですよ。威厳ある美しい姿をしていただきます! ねぇ? 辰海殿」

 竜月は甘えるように与羽の腕にすがりついている。


「うん、そうだね」

 竜月の問いに、辰海は素早く答えた。与羽のめかしこんだ姿は、ぜひ見てみたい。
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