龍 神 の 詩 −嵐雨編−
□七色の羽根 - 忍草
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「何であなたが――?」
枕元から見下ろして、それが大斗(だいと)だと確認してつぶやいた。
彼は眉間にしわを寄せ、額には玉のような汗が浮いている。
苦痛に耐えながらも、死んだように眠っていた。
彼女はどうするべきか少しためらった後、大斗の近くに置いてあった手拭いでその汗をぬぐった。
拭いても拭いても汗は次々に流れ出す。
それでも彼女はしばらく大斗の看病を続けた。部屋の外からこちらに近づいてくる足音が聞こえてくるまで。
廊下を渡る足音が聞こえた瞬間、彼女は手に持っていた手拭いをもとあった場所に投げ出した。
そして痛む体を引きずるようにして、自分の布団まで戻る。
それとほとんど同時に、速足でこちらに歩いてきた主が部屋の戸をそっと開けた。
思わずそちらを見ると、ちょうど部屋に入ってきた青年と目があった。
「良かった。目覚めたか、華奈(かな)さん」
長髪の青年が嬉しそうにほほえむ。
「……水月(すいげつ)大臣」
華奈も彼の名をつぶやいた。
「他人行儀な呼び方だな」
絡柳(らくりゅう)は苦笑を浮かべながら、大斗の様子を確認している。