龍 神 の 詩 −嵐雨編−
□七色の羽根 - 忍草
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目覚めたのは薄暗い部屋の中だった。
「生きてる……、の?」
ぼんやりとした声でそうつぶやき、体を起こそうと無造作に力を入れた瞬間全身に鈍い痛みが走った。
「つッ……」
痛みに声を漏らしながら、一度体の力を抜く。
しばらくよく磨かれた天井板を見つめ、痛みが引いたところで今度は慎重に自分の左手を持ち上げた。
そちらの方が右手よりも痛みが少なかったのだ。
手のひらも手のこうも腕も見えた範囲に大きな傷はなさそうだ。
痛みをこらえて持ち上げた右腕には包帯が巻かれている。
つんと薬草の匂いが鼻を突いた。
ゆっくりと首を動かすと窓が見えた。
青闇と白っぽい光からして、早朝のようだ。
反対側に首をめぐらせると、そちらには布団が敷かれていた。誰かが寝かされている。
まだ辺りが暗いせいで、それが誰かまでは分からない。
彼女は体の痛む場所を探りながら、自分の寝かされていた布団の上に座った。
「九鬼大斗(くき だいと)……?」
そこでやっと少し離れたところに寝かされている相手の正体に察しがついた。
それでも確信は持てなかったので、ゆっくりと近づく。