「紅花青嵐」

終章
2ページ/7ページ

「凪(ナギ)ちゃんはまだここにおるん?」

 それに浅くうなずいて、次に凪を見る。

「そうするつもり。まだ診ないといけない人がいるから」

 患者が気になるのか、乳鉢を抱えた凪はそわそわしている。


「比呼(ひこ)もここにおる?」

「いたいけど――」

 比呼はちらりと凪を見た。

 凪もわずかに首を傾げて、穏やかな目で比呼を見返す。

「でも、僕は城下に帰る。まだ診ないといけない人が多いから」

 与羽に向き直った比呼の目に迷いはなかった。

 凪の無事を確認できたのだから、自分は城下に帰って自分の仕事をこなさなくてはならない。


「わかった」

 与羽もそれ以上余計なことは言わずにうなずく。

「じゃあ、こっちのことは凪ちゃんと蒼蘭(そうらん)を中心に任せてええかな?」

「任せて」

「大丈夫」

 凪と蒼蘭はそれぞれ了承した。


 それにもう一度うなずいてから、与羽は貧しい集落を見渡した。

 建物と人と――。

 みすぼらしい家の間から様子をうかがっている者がほとんどだが、若者も子どもも女性もいる。

 もし、この集落が中州の一部となれば、活気ある村になるだろう。

 そうしなくてはならない。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ