「紅花青嵐」
□終章
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「凪(ナギ)ちゃんはまだここにおるん?」
それに浅くうなずいて、次に凪を見る。
「そうするつもり。まだ診ないといけない人がいるから」
患者が気になるのか、乳鉢を抱えた凪はそわそわしている。
「比呼(ひこ)もここにおる?」
「いたいけど――」
比呼はちらりと凪を見た。
凪もわずかに首を傾げて、穏やかな目で比呼を見返す。
「でも、僕は城下に帰る。まだ診ないといけない人が多いから」
与羽に向き直った比呼の目に迷いはなかった。
凪の無事を確認できたのだから、自分は城下に帰って自分の仕事をこなさなくてはならない。
「わかった」
与羽もそれ以上余計なことは言わずにうなずく。
「じゃあ、こっちのことは凪ちゃんと蒼蘭(そうらん)を中心に任せてええかな?」
「任せて」
「大丈夫」
凪と蒼蘭はそれぞれ了承した。
それにもう一度うなずいてから、与羽は貧しい集落を見渡した。
建物と人と――。
みすぼらしい家の間から様子をうかがっている者がほとんどだが、若者も子どもも女性もいる。
もし、この集落が中州の一部となれば、活気ある村になるだろう。
そうしなくてはならない。