「紅花青嵐」

終章
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「うん」

 小さく積み上げられた穀物を見て、与羽(よう)は満足げにうなずいた。

 ある程度話合いがまとまったところで、竜越(りゅうえつ)で待機していたラダムに連絡し、備蓄されている食料を運んでもらったのだ。


「中州城からも返事が来たよ。この筆跡は絡柳(らくりゅう)先輩かな」

 与羽の半歩後ろに控えていた辰海(たつみ)が、そう言って小さな紙切れを差し出す。

 そのさらに後ろには、森の民――蒼蘭(そうらん)がいた。

 彼女の左腕には分厚い革帯が巻かれ、トンビがとまっている。

 森の民が良く伝令に用いている鳥だ。

 華金(かきん)山脈に多く住み、鳩(ハト)や烏(カラス)に比べて体も大きいため、中州の隠密は好んでこの鳥を使う。


「ありがと」

 与羽は辰海と蒼蘭、そして伝令のトンビに礼を言って、紙切れに目を通した。

 小さいが上質な紙に楊枝(ようじ)の先で書いたように、小さく文字が書かれている。


 内容は与羽と辰海が勝手に行った交渉を正式に中州国としてのものと認めること。

 そして、詳しい話を聞くために早く城下町へ帰ってくるようにという指示だった。

 この隠れ里の監視や細かな指揮は、森の民に任せても良いそうだ。


「明日朝には、帰りはじめられるようにしょうか」

「そうだね」

 与羽の独り言のような呟きに、辰海は同意した。
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