「紅花青嵐」

四章 登蔦
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「ほらよ。これでいいのかい?」

 低めの女声とともに、凪(ナギ)のわきに草や根の束が置かれた。


「ありがとうございます、さくらさん」

 凪はそれをあらためながらお礼を言った。


「ふん」

 そんな凪の穏やかさが気に入らないのか、さくらは鼻をならして凪の目の前に寝かされている少女に目を向けた。

「助けられるんだろうね?」

「最善はつくします。まだ正確なことは言えませんが、似た症状の患者を診たことがあります。これから作る薬が効いてくれれば――」

 凪も自分が向かっている患者を見た。


 弱り切った熱っぽい目で、不安そうに凪を見上げる少女は十にも満たない。

 大きく息を吸い込むと咳き込んでしまうらしく、浅く息をついているのが何とも苦しげだ。


「この村にあるものは全て使ってくれて構わない。他に足りないものがあれば、できる限り用意する」

 部屋の隅で凪の様子を観察する青桐(あおぎり)が言う。

 彼は先ほども凪が必要な材料の名前を言うや否や、部下にすぐさま用意させた。

 薬草を持ってきてくれたさくらは、盗賊にいた短槍(たんそう)の女だ。

 今はややみすぼらしいものの、村娘の姿をしており、槍はない。
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