「風水炎舞」
□八章 龍姫の願い
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「小石……?」
辰海(たつみ)は小さく白いそれを見て、つぶやいた。
上にある岩から転がり落ちて来たにしては、位置が不自然で、小石が転がるきっかけとなるような風もなかった。
小石がたてた音も一回だけ。転がり落ちたならば上の岩で跳ねる音が複数回するはずだ。
誰かが投げたとしか――。
「与羽(よう)……?」
返事はない。それでも――。
「与羽っ!!」
辰海は叫んで駆けだした。
何度も転びそうになりながら、実際数回は転びながら岩の多い斜面を駆け上がる。
そして、視界が開けた。
たどり着いた大岩の上には月光を遮るものがなく、銀白の光が淡く降り注いでいた。
光が岩を白く照らすだけ。
岩の上に人影はなかった。
「与羽……?」
辰海は期待を裏切られ、呆然と立ち尽くした。
――コン。
絶望しかけた辰海の足に硬いものがあたる。
反射的に視線を落とすと、小さな石が落ちていた。
一拍遅れて、小石の飛んできた方を見ると、木陰の暗がりに小さな影――。