短編集
□第二の神代
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序章
僕が、おばあさんから聞いた話。
ずっと昔。
「カミヨ」って時代があって、人間と神様たちが一緒に暮らしていたんだって。
そのころは今よりも命が張り詰めていて、森や海、川どんなところにも精霊がいた。
精霊は自然が出す命の集まりで、その土地が豊かな証拠。
精霊と神様は僕たち人間のご先祖様にいろんなことを教えてくれて、仲良く暮らしてたって。
でも、精霊たちの中には悪さをする精霊もいたんだ。人を殺したり、食べ物をとったり――。
悪い精霊たちは集団で悪さをするから、人間も国つ神様たちもどうすることもできなかった。
でも、たった一人とっても強い女の神様が助けてくれたんだって。
「なんとかヒメ」って名前。おばあさんも正確な名前は知らないって言ってた。
その神様は強くって、相棒の精霊と一緒に悪い精霊たちと戦ってくれたんだよ。
けど、二人だけじゃこの広い中つ国を守りきれなくて、神様の世界――「タカマガハラ」の偉い神様は、「クニユズリ」っていうのをさせたんだ。
この中つ国が人間たちのものになれば、中つ国に張り詰めていた命は消えて、今まで悪いことをしてきた精霊たちも消えるだろうからって。
偉い天つ神には逆らえなくて、この世界に住んでいた国つ神たちは、人間と一緒に暮らすのをやめて、姿を隠しちゃったんだ。
そうしなかった神様もいたけど、その神様たちは力をなくして人間になっちゃったんだって。
その「なんとかヒメ」様も「タカマガハラ」に帰ってくるように言われた。
でも、ヒメはそれに抵抗したから、「タカマガハラ」で一番暗い所に閉じ込められちゃったらしい。
だから、今みたいに中つ国で鬼たちが人間を殺していても、神様は誰も助けてくれないんだ。