龍 神 の 詩 −暗鬼編−

羽根の姫 - 終章
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 そして朝。

 全く眠ることなく暗鬼(あんき)は布団をたたんだ。


 彼がいるのは、ここに来た日に与羽(よう)が貸してくれた部屋だ。

 いつもと変わらない朝に、昨夜の出来事が夢のようにさえ思える。

 しかし、部屋の隅で辰海(たつみ)が座ったままぐっすり眠っているところを見ると、やはり現実だったようだ。


「雷乱(らいらん)、どけて」

 戸の外から聞こえたのは、与羽のよく響く声。

「おう」と言う雷乱の答えと、衣擦(きぬず)れの音の後、与羽が入ってきた。


「よっ、おはよう。朝ごはん持ってきたよ」

 与羽はいつものように暗鬼に朝食を渡した後、すみで寝ている辰海を蹴り起こす。


「使えん奴じゃな、あんたは。雷乱つれて、私の部屋の障子(しょうじ)をはり直して来ぇ」


 寝ぼけ眼(まなこ)で与羽を見た辰海の目に、はっと強い光が宿る。

 そして次の瞬間、申し訳なさそうに頭(こうべ)を垂れた。


「ごめん……、与羽」

「ええけ、行け」

 そんな辰海に、与羽は容赦なく言い放って、開けたままだった障子戸の方をあごでしゃくる。

 辰海は与羽の言葉に従い、しょんぼりと部屋を出て行った。
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