龍 神 の 詩 −暗鬼編−
□龍神の郷 - 六章 玻璃の雫
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どのくらい寝ていたのだろう。
ぼんやりと目を開けると、むき出しになった梁(はり)が見えた。
それでここが中州にある自分の部屋ではないことに気付いた。
そして、天駆(あまがけ)に来たことを思い出す。
次の瞬間、一気に記憶がよみがえった。
陽動のこと、佐慈(さじ)で迷子になったこと――。
ゆっくりと体を起こすと、視界が暗転した。
額から、ぬるくなった手ぬぐいが落ちる。
目まいが落ち着いてから、額に手を当てると、じんわりと嫌な熱を感じられた。
「すごい高熱だったよ」
聞き覚えのあるその冷たい声に、ふと横を見ると部屋の隅で、大斗(だいと)が腕を組んで座っていた。
ひどく怖い顔をしている。
「九鬼(くき)、先輩……」
辰海(たつみ)の声は熱のためか、かすれていた。
「天駆の屋敷に行っても、お前は来てないって言うし、まだ場が混乱していたから佐慈に捜しにも行けない。
与羽(よう)に報告もできないし、老主人には余計な心配をさせたくない。
昼過ぎにお前が自力で帰ってきたって言うから来てみれば、濡れ鼠で気を失ってて、すぐに熱出して丸一日目覚めない。
お前ふざけてるわけ?
これだから、弱い奴は嫌いなんだよ」
淡々としたその声に怒りは感じられないが、それが逆に恐ろしい。