龍 神 の 詩 −暗鬼編−

龍神の郷 - 一章 天駆へ
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「あぁ、絡柳(らくりゅう)にやらせてもいいんじゃないか?」

 大斗(だいと)は皆が内心で思っていることを知ってか知らずか、自分や乱舞(らんぶ)と親しい文官青年の名前を出した。

「絡柳には別件を任せてある」

 乱舞がため息まじりに言う。


 ちなみに、比呼(ひこ)は「そこのチビ」と言われたことに衝撃を受けていた。

 比呼の背はいたって平均的。大斗が高いからそう見えるにすぎない。


「大斗先輩は性格に難がありますからね〜……」

 与羽の小さな呟きに、ここに集まったほとんどすべての人々が内心でうなずいた。


 しかしこんな大斗だが、相当腕がたつ。

 与羽や乱舞と同世代の人々の中でならば、大斗が一番強いだろう。

 多くの人は彼の強さと強面のために、必要最低限関わろうとはしない。

 若干名、大斗に気に入られ、関わらざるを得なくなった人々もいないではないが……。


 彼だけでなく、ここにいる人のほとんどが、その強さを知られていた。

 大柄で力自慢の雷乱(らいらん)。長刀(なぎなた)の扱いならば右に出るものはいない、長刀姫こと華奈(かな)。

 神官の津希(ツキ)以外は、みんな武術の心得がある。

 元暗殺者の比呼も言うに及ばず。辰海も一通り剣の扱いを叩き込まれてきた。実戦経験は乏しいが、腕は確かだ。

 今回は護衛任務が中心になることが予想されるので、腕のたつものを主に集めている。
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