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□今宵愛を巡る
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月夜の夜は憂鬱だ
また来ないかと 外を眺めてしまう
今宵愛を巡る
「アーサーさん」
「菊…?」
「また、断ったのですか?」
菊は、小さくため息をつきながら頭にさしたカンザシを揺らす
「だって…気に入らない」
「貴方のお眼鏡に叶う人は現れるんでしょうかね…」
この、籠の上位男唱になってから、まるっきり客と寝なくなった
話をしたり、だきあったり、酒をついだりはするが、絶対に寝なかった
「お外に 愛しい人でも?」
「いねぇよ…ただ…」
「ただ?」
「待っているんだ」
お外に、俺をホントに愛してくれる人がいるはずと夢をみて
ずっと、ずっと待っている
「館長さんに怒られますよ?」
「抱かれなくても喜ばれる方法は知ってるさ」
「……頼もしい」
楽しそうに笑いながら菊は自分の着物を緩めた
「では、私はお先に…まっておられます故」
「あぁ」
ゆったり歩いていく菊の後ろ姿を眺めた